睡眠の最新研究論文
オレキシンとヒスタミンによる覚醒調節の異なる役割(ノックアウトマウスにおける研究)


(目的)
覚醒状態の維持に関与していると考えられるオレキシン/ヒポクレチン神経系とヒスタミン神経系、それぞれの役割を調べる目的で、オレキシンノックアウトOx(-/-) マウスとヒスタミン合成酵素であるヒスチジン脱炭酸酵素をノックアウトしたHDC(-/-)マウスの行動特性と睡眠―覚醒特性の比較研究が実施されました。

(結果及び考察)
両マウス共に、睡眠の断片化と逆説睡眠の増加が認められました。その一方で、両マウスにおいて、いくつかの顕著な相違も認められました。すなわち、HDS(-/-)マウスにおける逆説睡眠の増加は明期(ヒトでは夜間に相当)に認められたのに対して、Ox(-/-)マウスの逆説睡眠は暗期(ヒトでは日中に相当)に観察されました。また、HDC(-/-)マウスとは異なり、Ox(-/-)マウスでは明期から暗期へ切り替え時の覚醒状態、脳波、新しい環境への行動反応は正常でした。さらには、回転ホイールを用いて運動を負荷させた時に、Ox(-/-)マウスのみに覚醒状態の欠損(deficient wakefulness)と運動量の低下が認められました。

Ox(-/-)マウスの覚醒と運動活動の異常低下は、オレキシンの欠損によるものと考えられました。すなわち、オレキシンAを脳室内投与すると覚醒と運動パフォーマンスが正常化し、野生型マウスへのオレキシン1受容体遮断作用を有するSB-334867の腹腔内投与により覚醒と運動パフォーマンスの低下が観察されました。

これらの所見から、ヒスタミン神経系ではなく、オレキシン神経系が運動を負荷した時の覚醒状態を賦活させていることが示唆されました。ヒスタミン神経とオレキシン神経の役割は異なっているものの、相補的、協力的に覚醒状態を調節していると思われます。

神経ぺプタイドであるオレキシンは覚醒の行動学的な側面(behavioral aspects of wakefulness)に対する関与がより強く、アミンであるヒスタミンは覚醒の質的な認知機能の側面(qualitative cognitive aspects of wakefulness)と皮質脳波の活性化に対する関与がより強いと考えられました。

(論文抜粋のため、詳細は下記の文献をご参照ください)
(Anaclet C et al: Orexin/hypocretin and histamine: distinct roles in the control of wakefulness demonstrated using knock-out mouse models. J Neurosci; 18:14423 - 14438, 2009)


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