睡眠の最新研究論文
CPT1BとCHKB遺伝子間の多型性とHLA-DRB1*1501-DQB1*0602ハプロタイプは中枢性過眠症の易罹患性と関連する


(背景)
日本人と韓国人の情動脱力発作を伴うナルコレプシーを対象としたgenome-wide association研究において、carnitine palmitoyltransferase 1B(CPT1B)と choline kinase beta(CHKB)遺伝子の間に位置するSNP rs5770917がナルコレプ シーの罹患しやすさと関連していることを以前の私たちの研究結果で明らかに しました。

また、日本人の情動脱力発作を伴うナルコレプシーでは、すべての患者がHLA- DRB1*1501-DQB1*0602ハプロタイプを有しており、このHLA型とナルコレプシーの 発症との関連性も指摘されています。

ナルコレプシー以外の中枢性過眠症もナルコレプシーと同様に複雑な疾患であり、 遺伝的要因や環境因子が発症に関与している可能性があります。しかしながら、 罹患率の低さや診断の難しさ故にその病態の解明は進んでいません。中枢性過眠症 である真性過眠症(Essential Hypersomnia, EHS)はheterogeneousであり、睡眠 障害国際分類第2版でいう情動脱力発作を伴わないナルコレプシー、長時間睡眠を 伴わない特発性過眠症などのいくつかの中枢性過眠症が含まれます。

私たちは、EHSの診断基準を以下のように定めています。

1)少なくとも6ヵ月以上に渡り毎日の日中において繰り返しの睡眠エピソードが認められる。

2)情動脱力発作は認められない。

3)睡眠時無呼吸症候群のような日中の眠気の原因となるいかなる疾患を除外することができる。

(目的)
本研究では、EHSとSNP rs5770917、HLA-DRB1*1501-DQB1*0602ハプロタイプとの間 に関係性があるか否かについてcase-control association法にて検討を行いました。

(方法)
東京もしくは東京の近郊に在住の137名のEHS患者と569名の健常者を被験者としま した。SNP rs5770917のgenotypingは Taqman genotyping assayを用いて実施しま した。HLA-DRB1とHLA-DQB1の同定は WAKFlow HLA typing kitを用いた Luminex Multi-Analyte Profiling systemにて行いました。

(結果)
EHS群と健常者群のSNP rs5770917の遺伝子型頻度を比較すると統計的に有意な差が 認められました(P allele=0.0036, オッズ比=1.56; 95%信頼区間 1.12-2.15)。 SNP rs5770917がEHSの発症に関与する人口寄与危険度は14.2%でした。ちなみに、 情動脱力発作を伴うナルコレプシーに対する人口寄与危険度は21.2%です。

EHS群と健常者群のHLA-DRB1*1501- DQB1*0602ハプロタイプの頻度においても有意 な差が認められました(オッズ比=3.97,95%信頼区間 2.55-6.19)。

SNP rs5770917とHLA-DRB1*1501- DQB1*0602の間のinteractionは認められず、EHS の易罹患性に影響するこれら2つのマーカーは独立していることが示唆されました。

(考察および結論)
私たちが以前に実施したナルコレプシーを対象とした研究と今回のEHSでの所見か ら、SNP rs5770917は中枢性過眠症の共通したリスクマーカーであると思われます。

さらには、HLA-DRB1*1501- DQB1*0602ハプロタイプも同様に中枢性過眠症の易罹患 性と関連していると考えられます。

日本人のナルコレプシーでは、すべての患者がHLA-DRB1*1501-DQB1*0602陽性のた め、SNP rs5770917との相互作用を調べることができませんでした。しかしながら、 今回のEHSでの研究所見から、これら2つのリスクマーカーは独立していることが 認められ、おそらくナルコレプシーにおいても同様であることが示唆されます。

EHSは情動脱力発作を伴わないため、SNP rs5770917の多型性は日中の過度の眠気の 病態と関連している可能性があります。

私たちの一連の研究から、EHSと情動脱力発作を伴うナルコレプシーは少なくとも その一部において共通の遺伝的背景を有している可能性が示唆されました。

(Miyagawa T et al: Polymorphism located between CPT1B and CHKB, HLA-DRB1* 1501-DQB1*0602 haplotype confer susceptibility to CNS hypersomnias (essential hypersomnia). PLoS ONE 4: e5394, 2009)


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