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情動脱発作を伴うナルコレプシー患者の脳内神経化学的異常の分布:in vivo MRS研究


(背景)
情動脱力発作を伴うナルコレプシーは、日中の過度な眠気、激しい情動変化がトリガーとなる筋緊張の突然の消失(情動脱力発作)、夜間の睡眠障害、レム睡眠障害として出現する幻覚や睡眠麻痺などが特徴の慢性疾患です。

情動脱力発作を伴うナルコレプシーではヒポクレチン(オレキシン)を産生する視床下部ニューロンの消失が認められています。この神経伝達物質であるヒポクレチンは覚醒系の調節に関与しています。神経画像や神経代謝研究から大脳皮質や視床のような他の脳領域に病態が存在することを示唆する報告がありますが、全体的に一致した所見は得られていません。

(目的)
本研究では、Proton Magnetic Resonance Spectroscopy (1H-MRS)を用いて情動脱力発作を伴うナルコレプシー患者の脳内における神経化学的な異常の検出が試みられました。

(方法)
1H-MRS(Single voxel法)にてHLA-DQB1*0602陽性で薬物治療を受けていない患者の視床、視床下部、頭頂−後頭部皮質を調べました。

(結果)
患者の視床および頭頂−後頭部皮質において、有意な変化を検出することができませんでした。その一方で、神経マーカーであるN-acetyl-aspartateがナルコレプシー患者の視床下部においてコントロールよりも減少していました。

(結論)
今回の1H-MRSの所見から情動脱力発作を伴うナルコレプシーでは視床下部が病態の主要部位であることが示唆されました。視床や大脳皮質において1H-MRSによる神経変性変化が認められなかったことから、他の神経画像手法で報告されたこれらの脳部位の異常所見は機能的な性質反映していたのかもしれません。
(Tonon C et al. Distribution of neurochemical abnormalities in patients with narcolepsy with cataplexy: An in vivo brain proton MR spectroscopy study. Brain Res Bull, May 20 online, 2009)


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