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オレキシン遺伝子を欠損させたマウスへのオレキシン遺伝子導入とその効果

(背景)
遺伝子導入法は、様々な神経変性疾患における神経化学的な治療手段として期待されていますが、睡眠障害に応用できる可能性についての報告はありません。ナルコレプシーは、視床下部に存在する神経ペプチドでありオレキシン(ヒポクレチン)含有神経細胞の消失が病態とリンクしていることが判明しています。ナルコレプシーは過眠を主症状とする睡眠障害であり、神経変性疾患でもあります。

(目的)
本研究では、ナルコレプシーの治療に対する遺伝子導入技術の応用の可能性について検討しました。

(方法)
複製機能を欠いた単純ヘルペスウイルス1型由来のベクターにオレキシンの前駆体であるプレプロオレキシン遺伝子を組み込みました。オレキシンノックアウトマウスの視床下部後部にこのベクターを注入し、オレキシンの産生、情動脱力発作、睡眠活動などを観察しました。

(結果)
オレキシン遺伝子導入により、多くの神経細胞体にオレキシンが豊富に産生されるようになり、脳脊髄液中にもオレキシンが検出されるようになりました。 このベクターの寿命である4日間に渡って、情動脱力発作の発現はおよそ60%減少し、レム睡眠の活動は野生型マウスとほぼ同じになりました。

(考察および結論)
ナルコレプシーの動物モデルであるオレキシンノックアウトマウスにオレキシン遺伝子を導入させることにより、ナルコレプシー様の睡眠異常の改善が認められました。クリアすべき課題は多いですが、ヒトのナルコレプシーに対する新しい治療応用の可能性が示唆されました。
  (Liur M, et al.: Orexin (hypocretine) gene transfer diminishes narcoleptic sleep behavior in mice. Eur J Neurosci 28: 1382-1393, 2008)



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