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ヒポクレチン(オレキシン)は尾側正中腹側被蓋野ドパミンニューロンを優先的に活性化させる

(背景)
ヒポクレチン(オレキシン)ニューロぺプチド系は多くの神経伝達物質系を調節しています。近年の研究で、ヒポクレチンは前頭前野や側坐核shellのドパミン神経伝達を選択的に亢進させることが示唆されています。しかしながら、異なるドパミン神経投射経路に対して、ヒポクレチンが異なる作用を発揮するメカニズムは解明されていません。

解剖学的にみると側坐核は側坐核shellと側坐核coreに区別できます。ドパミン神経系の起始核である腹側被蓋野のドパミンニューロンからは、中脳皮質系が前頭前野や側坐核shellなどへ投射し、中脳辺縁系が側坐核coreなどへ投射しています。

(目的)
本研究では、ヒポクレチンが腹側被蓋野内の側坐核coreへ投射するドパミンニューロンよりも前頭前野や側坐核shellへ投射するドパミンニューロンを選択的に活性化させるのか否かについて調べました。

(方法)
実験動物を用い、前頭前野、側坐核shellあるいは側坐核coreに逆行性のトレーサーであるfluorogold(FG)を注入しその1週間後に脳室にヒポクレチン1を投与しました。

その後の解析において、腹側被蓋野の吻側部から尾側部における(1)チロシン水酸化酵素(TH)免疫活性陽性細胞においてFos免疫活性が認められる、(2)FG陽性ニューロンにTH陽性が認められる、および(3)FG陽性ニューロンにFos免疫活性が認められることを確認しました。

(結果)
ヒポクレチンは腹側被蓋野ドパミンニューロン(TH陽性細胞)のFos免疫活性を有意に増加させました。その効果は主として、尾側正中腹側被蓋野内の小型から中型のドパミンニューロンに限局していました。

さらには、内側前頭前野や側坐核shellへ投射している腹側被蓋野内のTH陽性ニューロンの方が、側坐核coreへ投射しているTH陽性ニューロンよりもFos免疫活性が強く現れました。

(考察および結論)
これらの所見から、ヒポクレチンは腹側被蓋野内の内側前頭前野と側坐核shellに投射しているドパミンニューロンを選択的に活性化させているという新たなエビデンスが得られました。すなわち、内側前頭前野と側坐核shellの働きに関連する認知過程、あるいは情動形成過程において、ヒポクレチンが重要な役割を担っていることが示唆されました。

さらには、今回の所見ならびに他の研究報告から考慮すると、ヒポクレチンとドパミンのインターラクションの不具合が様々な行動障害に関連する認知・情動障害に関連している可能性が示唆されました。
  (Vittoz N M, et al.: Hypocretin /orexin preferentially activates caudomedial ventral tegmental area dopamine neurons. Eur J Neurosci 28: 1629-1640, 2008)



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