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情動脱力発作を伴うナルコレプシー患者の嗅覚異常とオレキシン

(背景)
近年、ドイツのStiasny-Kolster博士らは、ナルコレプシー患者では嗅覚に軽度ですが異常があるかもしれないことを報告しています。情動脱力発作を伴うナルコレプシー患者において、脳脊髄液中のオレキシンA(ヒポクレチン1)濃度が顕著に減少しています。視床下部のオレキシン含有神経細胞は脳の様々な領域と連絡しており、嗅脳領域(嗅粘膜から嗅脳皮質まで広範囲)にも神経線維を投射しています。ですから、情動脱力発作を伴うナルコレプシー患者の嗅覚異常は、低下しているオレキシン神経系が関与しているかもしれません。

(目的)
情動脱力発作を伴うナルコレプシー患者の嗅覚を測定し、異常がある場合、オレキシン神経系の関与について調べることを目的としました。

(方法)
本研究では、情動脱力発作を伴うナルコレプシー患者10名と年齢、性別、BMI、喫煙の有無を適合させた健常者10名における、嗅覚を測定しました。嗅覚は匂いに対する閾値、識別、同定をスコア化して評価しました。

次に、ナルコレプシー患者に対してオレキシンまたはプラセボを二重盲検無作為クロスオーバーにて鼻腔内適用し、2-phenyl-ethyl alcohol (PEA)に対する匂いの感知閾値を測定しました。

(結果)
健常コントロール群と比較して、ナルコレプシー群では嗅覚の閾値(P<0.05)、識別(P<0.005)、および同定(P<0.05)に関してすべての能力の有意な低下が認められました。

すべてのナルコレプシー患者において、PEAに対する匂いを感知する能力は、オレキシンAの鼻腔内投与において、プラセボ投与よりも有意に高くなりました(P<0.05)。

(結論)
今回の所見は、情動脱力発作を伴うナルコレプシーでは、軽度の嗅覚障害が内在的に認められるという仮説を支持するものでした。オレキシンAを鼻腔内適用することにより、嗅覚の改善が認められたことから、ナルコレプシー患者の嗅覚障害は、脳内オレキシンの欠損に起因することが示唆されました。
  (Baier PC, et al..: Olfactory dysfunction in patients with narcolepsy with cataplexy is restored by intranasal Orexin A (Hypocretin-1). Brain, August 21, 2008)



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