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HLA DR2陽性ナルコレプシー患者では末梢visfatin濃度が増加している

(背景)
ナルコレプシーでは視床下部のオレキシン神経細胞の脱落が認められていますが、オレキシン関連遺伝子の異常は認められていなく、その病態は未だに完全には理解されていません。ナルコレプシーではHLA DQB1*0602が陽性であることが知られており、免疫グロブリンの静脈内投与により情動脱力発作が改善するという報告もあります。このように、ナルコレプシーの発症に自己免疫機能の異常が関与していることが示唆されています。

Visfastin(ビスファチン)は近年発見されたもので、内臓脂肪(Visceral fat)に豊富に存在することからvisfastinと命名されました。その後、免疫調節因子であるpre-B-cell colony enhancing factor (PBEF)と同一であることが明らかとなりました。

Visfastinは培養細胞においてインスリン様の作用を発揮し、マウスにおいて血漿グルコース濃度を低下させます。さらには、visfastinはIL-1, IL-1Ra, IL-6, IL-10, TNFなどのサイトカイン濃度を用量依存的に増加させます。これらのサイトカインは、自己免疫疾患に対して重要な関与をしていると考えられています。

(目的)
今回、ナルコレプシー患者ではvisfatin濃度が変化しているという仮説をたて、54名のナルコレプシー患者と39名の健常者の末梢visfatin濃度を比較検討しました。

(方法)
54名のナルコレプシー患者(男性18名、女性36名)を被験者としました。平均BMI値は30.3で、平均年齢は52.5歳でした。健常コントロール群は睡眠障害を有さない39名のボランティア(男性12名、女性27名)で、平均BMI値は28.5、平均年齢は51.1歳でした。 

末梢visfatin濃度は酵素免疫アッセイで測定しました。ナルコレプシーの症状、重症度などはStanford Center for Narcolepsy Sleep Inventoryの非構造化および構造化面接で評価しました。

(結果)
HLA DR2陽性率は、ナルコレプシー群で85%、コントロール群で23%でした。Visfatin値に性差はありませんでした。HLA DR2陽性であるナルコレプシーの平均visfatin濃度は36.2 ng/mlであり、健常コントロール群(平均濃度19.4 ng/ml)よりも有意に高値でした。HLA DR2 陰性ナルコレプシー患者(平均濃度20.2 ng/ml)とコントロール群には、差がありませんでした。

Visfatin濃度と、年齢やBMIとの相関性は認められませんでした。さらには、ナルコレプシー症状の頻度、重症度、発症年齢、罹患期間とvisfatin濃度との相関性もありませんでしたが、HLA DR2陽性である男性ナルコレプシー患者の自己申告による情動脱力発作頻度とvisfatin濃度に間に有意な相関性が認められました。

(結論)
HLA DR2陽性のナルコレプシー患者のみが、健常コントロール群よりもvisfatin濃度の有意な増加を認めました。今回の結果は、ナルコレプシー患者における免疫機能に異常があることを示すものです。
  ( Dahmen N, et al..: Elevated peripheral visfatin levels in Narcoleptic patients. PLos ONE 3: e2980, 2008)



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