睡眠の最新研究論文
若年のナルコレプシーにおいて内側前頭前野GABA濃度が増加している

(背景)
脳内のGABAとグルタメートは、それぞれ主要な抑制性と興奮性の神経伝達物質として重要な働きをしており、睡眠とも密接に関連していることが知られています。しかしながら、ナルコレプシー患者を対象として、Proton Magnetic Resonance Spectroscopy (1H-MRS)によるGABAやグルタメートの変化を報告した研究はほとんどありません。

(目的)
若年のナルコレプシー患者ならびに健常人の内側前頭前野と基底核のGABA、グルタメート濃度を1H-MRSにより定量比較しました。

また、新聞広告による募集で、17名の健常コントロール群(男性12名、女性5名、平均年齢26.8歳、17-35歳の範囲)をリクルートしました。被験者に対して、少なくとも試験7日前よりすべての治療薬の中断をお願いし、少なくとも24時間前よりカフェインとアルコールを控え、少なくとも2時間前より喫煙を止めるよう指導しました。

高磁場(3.0 Tesla)MR装置を用いた1H-MRSにより内側前頭前野と基底核のGABAおよび関連代謝物、グルタメートなどを非侵襲的に定量しました。

(方法)
17名の若年のナルコレプシー患者(男性14名、女性3名、平均年齢25.1歳)を被験者としました。試験への選択基準は、1) 年齢が17-35歳、2) 主観的な日中の過度の眠気の存在、3) 情動脱力発作の存在、4) HLA DQB1*0602陽性、5) 反復睡眠潜時検査(MSLT)による入眠時レム期の出現が2回以上、6) MSLTによる平均睡眠潜時が5分未満、としました。

(結果)
ナルコレプシー群では健常コントロール群よりも内側前頭前野におけるGABA濃度が有意に高値でした(ナルコレプシー群:1.15±0.36 mM/kg、健常コントロール群:0.62±0.39 mM/kg、P<0.001)。基底核では両群に差はありませんでした。GABA以外に測定したGABA関連代謝物、グルタメートなどの内側前頭前野と基底核における濃度も両群において差がありませんでした。

サブ解析を行ったところ、夜間睡眠障害を伴わないナルコレプシー患者(8名)の方が、夜間睡眠障害を伴うナルコレプシー患者(9名)よりも内側前頭前野のGABA濃度の高いことが認められました(夜間睡眠障害を伴わないナルコレプシー群:1.34±0.30 mM/kg、夜間睡眠障害を伴うナルコレプシー群:0.97±0.33 mM/kg、P=0.03)。また、夜間睡眠障害を伴うナルコレプシー群の内側前頭前野GABA濃度においても、健常コントロール群よりも、有意に高い値を保持していました。

(結論)
若年のナルコレプシーでは内側前頭前野におけるGABA濃度が健常人よりも有意に高いことが、高磁場MR装置を用いた1H-MRS解析で明らかとなりました。この変化は、夜間睡眠障害を伴わないナルコレプシーの方が伴うナルコレプシーよりもさらに顕著であったことから、夜間睡眠障害に対する適応変化の可能性も考えられます。また、今回3.0 Teslaという高磁場MR装置を用いたことによりS/N比(シグナルとノイズの比率)が従来の1.5 Tesla装置よりも高く、精度の高い定量が可能であることが認められました。
(Kim SJ et al. Increased GABA levels in medial prefrontal cortex of young adults with narcolepsy. Sleep 31:342-347, 2008)


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