睡眠の最新研究論文
モダフィニルによる局所脳血流量の変化

(背景)
覚醒を促進させるモダフィニルはナルコレプシーに伴う日中の過度の眠気を軽減させる治療薬ですが、その作用機序は未だに十分に解明されていません。近年、オレキシン(ヒポクレチン)含有神経細胞の活性化が覚醒状態の制御に重要な役割を担っていることが明らかになりましたが、モダフィニルはオレキシンが欠損しているナルコレプシー患者において覚醒促進作用を有しているため、モダフィニルの覚醒促進作用にはオレキシン含有神経細胞の活性化が必須ではないことが示唆されています。モダフィニルは、ラット視床下部前部において間接的にヒスタミン放出を増加させることが報告されています。 また、モダフィニルはネコ視床下部前側核とその隣接領域の神経細胞において著明なFos様の免疫活性を示すことも報告されています。このような所見からモダフィニルは二次的(間接的)に結節乳頭核から睡眠を促進させる腹外側視索前野への抑制性の入力(ヒスタミン作働性)を増大することにより、腹外側視索前野の活動を抑制していると推察できますが、今後のさらなる研究が望まれます。

(目的)
健常人にモダフィニルを投与したときの局所脳血流量(rCBF)の変化を調べる目的で、99mTc-ethylcysteinate dimer (ECD)を用いた単一光子放射断層撮影(SPECT)によるプラセボとの二重盲検試験を実施しました。

(方法)
21名の右利きで、睡眠―覚醒リズムが正常な健常ボランティア(平均年齢20.3歳、20歳から26歳)を対象としました。試験は、無作為二重盲検クロスオーバーとしました。被験者は、試験期間である19日間の間に5回病院で各種の検査や試験を受けました。すなわち、試験1日目に試験前評価を実施、試験2日目に99mTC-ECD SPECT(1回目)によるベースライン評価を実施、試験3日目にプラセボあるいはモダフィニルを服薬3時間後に99mTC-ECD SPECT(2回目)を実施しました。その後、wash out期間を設け、試験19日目にモダフィニルあるいはプラセボを服薬3時間後に99mTC-ECD SPECT(3回目)を実施しました。試験2日目、3日目、18日目、19日目には、眠気(エプワース眠気尺度ESSとスタンフォード眠気尺度SSS)と覚醒に関する評価も実施しました。モダフィニルの投薬量は400mg(注:日本で承認されている1日最大投与量は300mgです)としました。

(結果)
モダフィニルの投薬により、ESSとSSSの得点は有意に減少しましたが、プラセボでは変化がありませんでした。覚醒試験として聴覚と視覚による反応時間検査を実施しましたが、モダフィニルとプラセボの両群において、投薬による影響はありませんでした。

脳SPECT画像の統計的パラメトリック・マッピング解析(SPM)の結果、モダフィニルの投薬により投薬前と比較して両側の視床、脳幹において有意なrCBFの増加が認められました。プラセボの投薬では、脳幹の一部において有意なrCBFの増加が認められました。プラセボ投薬群と比較すると、モダフィニルの投薬により両側前頭極、両側眼窩前頭回、両側上前頭回、両側中前頭回、両側島短回、左側帯状回、左側中側頭回、左側下側頭回、左側海馬傍回、左側中側から背側の橋において、有意なrCBFの増加がみられました。

(結論)
本研究において、健常人にモダフィニル400mgを単回投与すると、視床、脳幹、島皮質、辺縁系の一部においてrCBFの増加を認めました。覚醒、注意、実行機能、感情などと関連性がある脳領域でrCBFの増加がみられたことは、とても興味深いものでした。
(Joo EY et al., Cerebral blood flow changes in man by wake-promoting drug, modafinil: a randomized double blind study. J Sleep Res 17: 82-88, 2008)


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