睡眠の最新研究論文
ナルコレプシー患者の眠気と体温の関係

(背景)
健常人では、日中の深部体温が皮膚温よりも相対的に高く、夜間の皮膚温が深部体温よりも相対的に高いことが知られています。このバランスが適切な覚醒や睡眠と関係していると考えられます。ナルコレプシーでは覚醒に障害が認められ、日中の過度の眠気を呈しますが、この眠気は皮膚温の異常と相関しているかもしれません。

(目的)
ナルコレプシーの覚醒系の障害と皮膚温の異常との関連性を解明する目的で実施されました。

(方法)
睡眠障害国際分類第2版(ICSD-2)で情動脱力発作を伴うナルコレプシーと診断された8名のナルコレプシー患者(男性5名、女性5名、平均年齢28.6±6.4歳)を被験者としました。ただし、メタボリック症候群、糖尿病、甲状腺機能障害、心血管性疾患などの末梢血管に影響を与える疾患に罹患している患者は対象外としました。 女性の被験者では、中卵胞期(月経周期の4日から12日)に試験を実施しました。Vigilance(周囲に対する注意や警戒心という観点からみた覚醒状態)の測定にはPsychomotor Vigilance Task (PVT)を、眠気の測定には覚醒維持検査(MWT)を採用しました。近位部皮膚温および遠位部皮膚温の人為的な変動は様々な形のボディースーツを着用することにより行いました。 一例ですが、近位部皮膚温を下げて遠位部皮膚温を上げるためには、胸と背中を開けて手足の末端が覆われる形のボディースーツを作成しました。深部体温の人為的な変動は温かい、あるいは冷たい食事と飲み物で行いました。

(結果)
深部体温を温めると、冷やした時と比較してPVTの反応スピードが有意に早くなりました(P=0.02)。すなわち、深部体温が高いほうが vigilanceが高まっていることが認められました。遠位部皮膚温を冷やすと、温めたときと比較して覚醒維持検査における覚醒の維持が24%延長しました(遠位部を温めたときの平均睡眠潜時1.88分、冷やした時の平均睡眠潜時2.34分;P<0.01)。 すなわち、遠位部皮膚温度の低い時の方が、眠気が軽減していることが認められました。

(結論)
深部体温と皮膚温は、ナルコレプシー患者のvigilanceと眠気に影響を与えていることが分かりました。これらの所見は、今後の臨床における治療に役立てることが可能と思われました。すなわち、日中の眠気と闘っている時の手助けとして、手足の末端を冷やしながら温かい飲み物を摂取することが有効かもしれません。
(Fronczek, R et al. Manipulation of core body and skin temperature improves vigilance and maintenance of wake fulness in narcolepsy. Sleep 31: 233-240, 2008)


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