GABAニューロンを識別可能としたマウスにおけるレム睡眠を調節している脳幹GABA作働性ニューロンの役割

(要約)
近年、脳幹のGABA作働性ニューロンがレム睡眠をコントロールしているかもしれないことが示唆されています。しかしながら、その薬理学的あるいは生理的な機序はほとんど解明されていません。そこで本実験ではGABA合成酵素であるグルタミン酸脱炭酸酵素のアイソフォームであるGAD67の遺伝子プロモーター領域に緑色蛍光タンパク質( green fluorescent protein,GFP)の発現をノックインさせたマウスを用いて脳幹におけるGABA作働性ニューロンのレム睡眠に対する役割について検討されました。

このマウスでは、脳幹の中心灰白質と網様体に数多くのGFP陽性ニューロンを検出することができます。大型のセロトニン作働性ニューロン、ノルアドレナリン作働性ニューロン、コリン作働性ニューロンおよび網様体ニューロンの周囲に小型あるいは中型のGFP陽性神経細胞体が認められました。その 96%以上が、GFPとGABAの両者に対して陽性であり、GFP陽性ニューロンはGABAニューロンであることが同定されました。

レム睡眠を促進するために重要である脳幹領域 [青斑下核 subcoeruleus (SubC) と橋吻側核 pontine nucleus oralis (PnO)領域]におけるwhole-cell記録により、GFP陽性ニューロンにおいて3-12Hzの持続的な自発発火が認められ、過分極ステージにおいて中程度のdepolarizing sag が観察されました。多くのGFP陽性ニューロンにおいて、小さな低閾値カルシウムスパイクも観察されました。 GFP陽性ニューロンの活動性をレム睡眠を促進させるカルバコールあるいは抑制させるオレキシンAを用いて薬理学的に検討しました。SubC のGFP陽性ニューロンは、コリン作働性神経のアゴニストであるカルバコールによって興奮しました。一方、PnO のGFP陽性ニューロンは、抑制あるいは興奮のいずれかが認められました。両領域のGFP陽性ニューロンはオレキシンによっていずれも興奮しました。

これらの所見は、PnOにおけるカルバコール抑制性のGABA作働性ニューロンは覚醒中のSubC のレム睡眠を促進させる網様体ニューロンを抑制し、その一方で、SubCとPnOにおけるカルバコール興奮性のGABA作働性ニューロンはレム睡眠中の青斑核と背側縫線核のモノアミン作働性ニューロンを抑制するという仮説を支持するものでした。これらのことから、覚醒中のオレキシン作働性神経によるレム睡眠の抑制は、その機序の一部をアセチルコリン抑制性GABA作働性ニューロンを介していることが示唆されました。
(Brown RE et al. Characterization of GABAergic neurons in rapideye-movement sleep controlling regions of the brainstem reticular formation in GAD67-green fluorescent protein knock-in mice. Eur J Neurisci 27:352-363, 2008)


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