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「過眠症ランド」メールマガジン 第15号
2007, 6,27 配信
みなさん、こんにちは!「過眠症ランド」メールマガジン第15号です。
17年ゼミがイリノイ州、ウィスコンシン州、アイオワ州、インディアナ州の一部で大発生しています。5月下旬に現れ始めて、7月中旬には死滅するので、日本のセミよりも時期が早いですね。
アメリカでは南部を中心に13年ゼミがいて、北部には17年ゼミが生息し ています。それぞれがいくつかのグループに分かれており、同一グループの セミは完全に体内時計が同調しているため同じ年に一斉に孵化します。今年 はBrood XIIIというイリノイ州を中心とした地域に生息しているグループが 大発生しているのです。大量発生している地域の住民は騒音に悩まされてい るようですが、あと2週間我慢すれば、次は2024年までセミの発生があ りません。
興味深いのは、体内時計を同調させて同時に孵化することにより、つがいの 相手を容易に見つけることができるし、同時孵化という大量発生で敵に捕食 されても生き残る個体が必ず存在し種の保存につながります。さらには、孵 化する周期が13年、17年という素数なので、13年ゼミと17年ゼミが 同時発生するのは、221年に1回です。これも競合することを極力避ける ことにつながり、種の保存にとって非常に有利なことです。体内時計を種の 保存の見方にしてしまう、まさに生命の神秘と思います。
ちなみに、17年ゼミでは2齢期に4年間の摂食抑制があるため、13年ゼミより孵化まで4年長くなるそうです。摂食も睡眠も視床下部が重要ですし、様々なところで摂食と睡眠は密接な関係があります。ですから、13年ゼミや17年ゼミの生態には、とても興味を感じます。
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┃ 一般向け情報
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☆★☆ アメリカNCSDRのナルコレプシーの啓発内容の紹介 ☆★☆
今回から数回に分けて、アメリカの国立衛生研究所(NIH)の睡眠障害研究 国立センター(National Center on Sleep Disorders Research, NCSDR)が、 ナルコレプシーを一般向けに啓発している内容を紹介します。2006年3月に作 成されたものです。
・ナルコレプシーとは?(今回、紹介)
・ナルコレプシーの原因はなにか?
・ナルコレプシー発症の危険因子は?
・ナルコレプシーの症状は?
・ナルコレプシーの診断方法は?
・ナルコレプシーの治療方法は?
・ナルコレプシーとの付き合い方は?
・キーポイント
●ナルコレプシーとは?
ナルコレプシーは目覚めている状態を持続させることが困難となる病気であり、 日中に突然、居眠りをしてしまいます。この「睡眠発作」は夜間に十分な睡眠 をとっていても起こります。ナルコレプシーでは睡眠のパターンに異常がある ため、学校、仕事、社会生活において、支障をきたすようになります。
睡眠には2つの主要なタイプがあり、それはレム睡眠とノンレム睡眠です。 レム睡眠中は、閉じたまぶたの下で眼球が急速に動く現象を観察できます。 夢はおもにレム睡眠中に見るのです。レム睡眠中は、体に力が入らず、筋肉を 動かすことができなくなります。このように一時的に体を動かせない状態にさ せることで、夢に反応して体が勝手に動くことを防止しているのです。
通常、人が眠りに入ると最初にノンレム睡眠の状態になります。その後、レム 睡眠に移行します。ナルコレプシーの患者では、これとは異なる睡眠パターン を示します。ナルコレプシーでは、しばしばレム睡眠から始まるのです。さら に、ナルコレプシーでは睡眠と覚醒の間の境界が不明瞭になります。そのため、 レム睡眠時にみられる特徴的な現象を覚醒時に体験することがあるのです。
・覚醒時に、突然筋肉の緊張と制御を失う(情動脱力発作)。筋肉に力が入ら なくなるので、ときに体が崩れ落ちることもあります。
・寝入りばな、あるいは目覚める時に、動いたり声を出したりできなくなる (睡眠麻痺、いわゆる金縛り)。
・寝入りばなあるいは目覚める時に、鮮明な夢をみる(幻覚)。
(ナルコレプシーの影響)
ナルコレプシー患者は、しばしば不適切な時間に、周囲を警戒することなしに 居眠りをしてしまいます。この睡眠発作は読書をしている時やテレビを見てい る時のような活動をしていない時に、たまたま起こるのではありません。この 睡眠発作は、車の運転中、食事の最中、あるいは他の活動をしているときにも 起こるのです。そのため、次のような問題をはらんでいるのです。
・事故やけが
・仕事上あるいは学校生活でのトラブル
・社会生活での問題
・記憶、思考、集中力などに支障
・抑うつ気分
(重要なこと)
ナルコレプシーを完全に治す方法は、未だに見出されていません。もし、治療 をしなければ、長い人生を台無しにしてしまうでしょう。しかしながら、薬や ライフスタイルを変えることにより、ナルコレプシーの症状を改善させること ができます。そしてより楽に生活することができるようになるでしょう。
次回につづく
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ナルコレプシー関連の過去の記事
【過去の記事】
ナルコレプシー その1 (ナルコレプシーについて) メルマガ第2号
ナルコレプシー その2 (疫学と特徴的な症状) メルマガ第3号
ナルコレプシー その3 (過眠の評価法) メルマガ第4号
ナルコレプシー その4 (ナルコレプシーの治療) メルマガ第5号
ナルコレプシー その5 (ナルコレプシーと向き合う) メルマガ第6号
ナルコレプシー その6 (ナルコレプシー関連図書) メルマガ第7号
ナルコレプシー その7 (ナルコレプシーの克服) メルマガ第8号
ナルコレプシー その8 (ナルコレプシーとHLA) メルマガ第11号
ナルコレプシー その9 (ナルコレプシー治療薬の登場) メルマガ第12号
ナルコレプシー その10(ナルコレプシーの疫学調査 メルマガ第13号
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ナルコレプシーの詳細については、「過眠症ランド」の下記のurlを参照してください。
▽ナルコレプシーの解説はこちらから
http://kaminsho.com/general/instruction/disorder/index2.html
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過眠症ランドではクリニック情報を掲載しています。ご自身、ご家族、ご友人などで、過眠症が疑われる場合にご参考にしてください。ナルコレプシーなどの過眠症の専門医療機関を掲載しています。
▽お近くの睡眠障害専門病院は、こちらからお探しください
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┃ ちょっと専門的な情報
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☆★☆★☆ サイエンス・ニュース ☆★☆★☆
『最新研究論文の紹介』
情動脱力発作を伴うナルコレプシーでは、例外があるもののほとんどの患者の脳脊髄液中のオレキシン濃度が低値となっており、視床下部に局在するオレキシン含有神経細胞の変性脱落が明らかとなりました。しかしながら、オレキシン含有神経細胞が特異的に影響を受けるメカニズムが解明されていません。また、情動脱力発作を伴うナルコレプシー患者の多くが(日本人では100%)HLA DQB1*0602陽性であることが知られていますが、その理由も明らかになっていません。
HLA とナルコレプシーの関連性から、ナルコレプシーの病因のひとつとして自己免疫疾患が原因ではないかという仮説が提唱されています。多くの研究にもかかわらず、未だに自己免疫疾患を確証できるような報告がありませんが、自己免疫の標的がオレキシン含有神経細胞ではないかという仮説のもとに実施された研究成績が最近になって報告されてくるようになりました。未だに、決定打となる論文はありませんが、いくつか興味深い論文を紹介したいと思います。
●「HLA DQB1*0602陽性の情動脱力発作を伴うナルコレプシー患者の脳脊髄液中に、ラット視床下部抽出タンパク質に反応する免疫グロブリンGが存在する。」
45名のHLA DQB1*0602陽性の情動脱力発作を伴うナルコレプシー患者と57名の健常者から採取した血清、および20名の上記疾患の患者と20名の健常者から採取した脳脊髄液(CSF)を用いて、免疫吸着アッセイ法によりラット視床下部から抽出したタンパク質との反応が調べられました。
(結果)
患者と健常者のCSFを倍々希釈して比較したときに、1:2から1:64の範囲でELISAによるOD値が患者群において有意な高値を示しました。しかしながら、血清を用いた場合では、患者と健常者との間で有意な差が認められませんでした。CSFのIgG濃度には有意な差はありませんでした。
(結論)
ナルコレプシーの患者のCSF中に、視床下部タンパク質と結合するIgGの存在が示された初めての報告です。オレキシン含有神経細胞は視床下部に存在することから、オレキシン神経細胞の変性に自己免疫過程の関与の可能性が示されました。
紹介した原著論文
Black JL et al., HLA DQB1*0602 positive narcoleptic subjects with cataplexy have CSF IgG reactive to rat hypothalamic protein extract. Sleep; 28:1191-1192 (2005).
●「情動脱力発作を伴うナルコレプシー患者の血清中の抗体がラットオレキシン神経細胞に結合する。」
自己免疫が情動脱力発作を伴うナルコレプシーの病因ではという仮説があります。しかしながら、今までに特異的な自己抗体や抗原は同定されていません。間接的なavidin-biotin免疫組織化学法によって、情動脱力発作を伴うナルコレプシー患者あるいは健常者の血清を検体とし、ラットのオレキシン含有神経細胞に結合する抗体の探索を行いました。9名の患者のうち8名と検査したすべての健常者からは、ポジティブ反応は見られませんでした。しかしながら、1名の患者の血清がラット視床下部外側部の神経細胞膜と細胞膜に近い細胞質に強い染色反応が認められました。二重染色を行ったところ、オレキシン陽性細胞のほとんどがポジティブでした。しかしながら、同じ領域内のオレキシンを含有しない神経細胞もポジティブでした。
紹介した原著論文
Knudsen S et al., Antibodies in narcolepsy-cataplexy patient serum bind to rat hypocretin neurons. Neuroreport; 8:77-79 (2007).
●「ナルコレプシー患者におけるオレキシン特異的自己免疫の探索」
(方法)
終夜睡眠ポリグラフ検査と翌日の反復睡眠潜時検査において、ナルコレプシーと確定診断された患者を対象としました。インフォームド・コンセントの同意が得られた情動脱力発作を伴うナルコレプシー患者26名と情動脱力発作を伴わないナルコレプシー患者5名から、腰椎穿刺により脳脊髄液を採取しました。また、ヒト白血球抗原(HLA)のDQB1*0602が陽性かどうかのタイピングを実施しました。
Wistar系ラットから作成した視床下部スライスに、被験者の血清または脳脊髄液を添加し反応させ、その後ビオチン標識したヤギ抗ヒト抗体を加えさらに反応させ、以後、abidin-biotin 免疫ペルオキシダーゼ法により免疫組織的な解析が実施されました。ポジティブコントロールとして、視床下部が関与する抗Ma2抗体関連paraneoplastic syndrome患者からの血清を同様に解析しました。
脳脊髄液中のオレキシン濃度を検出できなかった5名の情動脱力発作を伴うナルコレプシー患者の血清をプールし、ラット視床下部由来のcDNA発現ライブラリーを用いて免疫スクリーニングを行いました。
(結果)
情動脱力発作を伴うナルコレプシー患者26名(HLA陽性25名、脳脊髄液中オレキシン濃度低値24名)の平均罹患期間は22.35±15.45年でした。情動脱力発作を伴わないナルコレプシー患者5名(HLA陽性2名、脳脊髄液中オレキシン濃度低値1名)の平均罹患期間は11.8±5.32年でした。すべてのナルコレプシー患者の血清と脳脊髄液から免疫活性を見出すことができませんでした。一方、ポジティブ対照群である抗Ma2抗体paraneoplastic syndrome患者からの血清を反応させた視床下部スライスにおいて神経細胞の核内に軽度の免疫活性が認められました。
視床下部ライブラリーを用いたスクリーニングにより、いくつかのポジティブクローンが見出されたものの、患者の血清に共通して反応するものはありませんでした。
(結論)
今回の研究結果からは、ナルコレプシー患者にオレキシン特異的な自己免疫の存在を見出すことができませんでした。
紹介した原著論文
Martinez-Rodriquez JE et al., Evaluation of hypothalamic-specific autoimmunity in patients with narcolepsy. Sleep: 30:27-28 (2007).
(編集者感想)
ナルコレプシーと自己免疫疾患との関係について、未だに統一見解はなされていません。 また、ナルコレプシーの発症原因はひとつではなく、一部の患者では自己免疾患の関与ということもあり得るかもしれません。いずれにしても、今後の さらなる研究が望まれます。
なお、この論文紹介は本メルマガのみで、「過眠症ランド」には現在のところ記載していません。
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