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機_正された「睡眠指針」


Q 概日リズム睡眠障害とは、どんな病気でしょうか?
 人間の身体は体内時計の発振する概日リズムによって、1日のなかで夜は眠りやすく、昼間は眠りにくくコントロールされています。この概日リズムが何らかの理由によって狂わされて起こる睡眠障害です。

Q 交代勤務の人に睡眠障害が多いと聞きました。
 交代勤務では、夜間に仕事を行い、翌朝から昼にかけて寝ることになります。体内時計とあわない時間帯に眠らなければならなくなるため睡眠障害になるケースも多く、交代勤務による睡眠障害の有病率は夜間勤務者の2〜5%と考えられています。
 治療法はさまざまです。何日も夜勤が連続する場合は、夜間に人工的な高照度光を浴び、日中は太陽光が目から入らぬように光環境を昼夜逆転させて日中の睡眠を安定させたりします。朝からの入眠を促す対処法としては、深夜勤後の帰宅時にはサングラスなどで太陽光が目から入らないようにして、帰宅したらできる限り早い時刻に寝ることがあげられます。

Q 若い人に多い概日リズム睡眠障害ってありますか?
 睡眠相後退型、自由継続型といった概日リズム睡眠障害があります。
 睡眠相後退型は、いったん夜型の生活になると、通常の時刻に眠って起床するというリズムに戻すことが困難になる症状です。概日リズム睡眠障害のなかでは最も頻度が高く、10〜20歳代に発症することが多く、有病率は人口の0.17%、高校生の0.4%と推定されています。
 日中の行動や心理状態と関わりなく、朝方まで眠れないという特徴があります。 いったん眠ると比較的安定した睡眠が得られ、遅い時刻まで起きられません。概日リズムを調べると、通常の生活ができる人と比べてホルモンの分泌などが3〜4時間遅れる傾向があります。
 自由継続型は、意思とは関わりなく、睡眠時間帯が毎日およそ 1 時間ずつ遅れていく症状です。睡眠と同じように毎日少しずつ生体リズムが遅れていきます。夏休みなどの長い休暇や受験勉強などによる昼夜逆転生活が発症の契機となることが多く、治療法としては、起床直後の高照度光療法などを用いて概日リズムを早める方法があります。



Q 中高年に多い概日リズム睡眠障害はどのようなものですか?
 睡眠相前進型で、睡眠相が慢性的に進んだ状態です。中高年での有病率は約1%で、年齢が高くなるにつれて有病率は増加します。夕方になると強い眠気を覚え起きていられず、20時前に入眠して早朝2〜3時頃には起きてしまい、その後眠ることができない状態になります。
 概日リズムの過剰な前進が原因なので、就寝前に高照度光を用いて概日リズムを遅らせることで症状が改善し、サングラスなどを用いて朝の一定時刻まで太陽光を避けることも有用です。

Q 閉塞性睡眠時無呼吸症候群について教えてください。
 睡眠中の舌の沈下により気道が塞がれ、大きないびきをかき、呼吸が停止すると、血液中酸素濃度が低下して覚醒反応が起こり、睡眠が妨げられます。夜間睡眠中の無呼吸症状は男性の24%、女性の9%に見られ、さらに日中に強い眠気がある臨床的な睡眠時無呼吸症候群の有病率は男性で4%、女性で2%と推定されています。
 閉塞性睡眠時無呼吸症候群は、終夜睡眠ポリグラフ検査で、睡眠1時間あたり15回以上の無呼吸や低呼吸などがあり、努力して呼吸しているような状態で診断されます。また睡眠1時間あたり5回以上の無呼吸や低呼吸などでも、無呼吸に関連した症状がある場合には診断が確定します。
 身体的な特徴としては、肥満、脂肪が多く首が短い、上気道が狭い、下顎が小さいことや後退していることなどがあり、治療法としては、体重の減少、口腔内装置、経鼻的持続気道陽圧法、外科的治療法などがあります。
 口腔内装置はマウスピースのような歯科装具を用いて舌の沈下による気道閉塞を防止し、比較的軽度の場合に効果があります。経鼻的持続気道陽圧法は、鼻にマスクを装着して空気を送り込み、上気道内を常に陽圧に保つことで上気道の閉塞を防止する方法です。

Q 脚がむずむずして眠れない状態も睡眠障害ですか?
 レストレスレッグス症候群と呼ばれています。就床と同時に脚に異常な感覚が生じ、下足を動かさずにいられないという強い欲求が現れ、落ち着きのない運動が生じるのです。これらの症状は安静時によく起こり、体を動かすことでよくなりますが、夕方から夜間にかけてよく起こるという特徴があります。最近の研究では、欧州と北アメリカの成人の9.4〜15.0% にみられ、さらに国際診断基準を適用すると有病率は 1.9〜4.6%と推定されています。アジア人における有病率は欧米人より低く、日本での成人の有病率は 1.8%と推定された研究もありました。
 レストレスレッグス症候群では、異常感覚が入眠の妨げとなります。中途覚醒時にも異常感覚が生じ、再び眠ることができにくくなります。
 原因としては、鉄欠乏などによって感覚制御に関連するドーパミン系の機能が低下することで生じると考えられ、ドーパミン作動薬で症状が改善します。
 なお、主として脚の不随意運動が睡眠中に繰り返し起こり、これが原因となって眠りが浅くなり中途覚醒が生じる周期性四肢運動障害もあります。睡眠中の動きを観察すると、脚や腕にぴくつくような不随意運動が反復してみられます。夜間に眠れないと、日中の過剰な眠気が現れることもあり、脚に症状が出る場合には、レストレスレッグス症候群の60〜80%で周期性四肢運動障害が合わせて出ています。



Q 子どもに多い睡眠障害にはどのようなものがありますか?
 睡眠時遊行症と睡眠時驚愕症です。学童期に多い睡眠時随伴症で、有病率は睡眠時遊行症では小児の17%、睡眠時驚愕症では小児の1〜6.5%とされています。
 睡眠時遊行症は、眠っていた患者が動きだし、起き上がってぼんやりした表情で歩き回るのが特徴です。悲鳴や叫声を上げたり、強い恐怖を示したりと、自律神経症状が現れる睡眠時驚愕症が合わせて出ることがあります。また、睡眠前半の深いノンレム睡眠期(徐波睡眠)から寝返りとともに症状が現れます。
 行動を止めようとした場合や起こそうとした場合に、完全に起きられず錯乱し、暴力的行動をとることがありますが、ほとんどの場合、異常行動中の記憶はなく自然治癒します。長期化する場合は、抗不安薬などを使うことがあります。

Q 中高年に多い睡眠時の行動障害はありますか?
 レム睡眠行動障害があります。50〜60歳代以上に多くみられる睡眠障害で、レビー小体型認知症やパーキンソン病の初期にみられることもあり、こうした神経変性疾 患との関連が注目されています。日中、起きているときには行動や認知に問題がなくても、レム睡眠になるたびに手足や体を大きく動かし、複雑な行動を示します。正確な有病率は不明ですが、高齢者では0.5%程度と考えられています。
 腕をあげてまさぐるような動き、叫ぶ、泣く、笑うなどの寝言、殴る、蹴るなどの攻撃的運動、立ち上がって動きまわるなどの異常行動がみられますが、これら異常行動は20〜30分経過してレム睡眠が終わると消失し、再び安らかに眠ります。
 人や動物に追いかけられるなどの悪夢をみることが多く、夢見の内容と異常行動は概ね一致します。レム睡眠行動障害では、素早い暴力的動作が多くみられ、このために同室者を殴ったり、室内のドアや障子などを壊すなどの問題を起こすことも少なくありません。このような異常行動の最中であっても、大声で呼びかけ、体を揺すったりすると完全に起こすことができます。

 人は人生の3分の1は寝床にいるといわれていて、それだけに睡眠の質は重要なものです。また、今日、睡眠障害はどのような人もかかる可能性があり、それは日中の活動にも悪影響を与えかねません。
 睡眠研究も、この10年で格段に進歩してきました。もし「眠れなくてつらい、普段の眠りとは違う」といったことを感じたら、自分で勝手な判断をせずに、専門医にきちんと相談してみることが大切です。







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