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機_正された「睡眠指針」


(3)増加する睡眠障害が背景に

 11年ぶりに改正された睡眠指針。その背景にはこの10年あまりに睡眠研究の進歩とともに、睡眠障害に悩む人の増加があります。下図をご覧ください。大まかにいうと国民の5人に1人が不眠症に悩み、高齢者にとって睡眠薬はもはや常備薬の一つともなっている感さえあります。

不眠症の患者数


睡眠薬の使用率


 こうした状況を受けて、改正された睡眠指針でも「睡眠障害」とはどのようなものか、その種類や治療法などについて解説しています。「過眠症ランド」のウェブページで既出のものありますが、おさらいの意味も込めて1問1答式でその内容をお伝えしましょう。



Q 睡眠障害ってどんな障害ですか?
 寝床に入っても眠れない不眠症、睡眠時無呼吸症候群などの睡眠呼吸障害、日中に過剰な眠気が見られる過眠症、レストレスレッグス症候群などの睡眠中の異常な感覚・運動の障害、概日リズム障害、寝ぼけなどの睡眠時随伴症とさまざまな症状があります。

Q 不眠症ってどんな症状ですか?
次のような症状のことです。
  • 入眠困難、睡眠維持困難、早朝覚醒、回復感欠如などの夜間の睡眠困難
  • 適切なタイミングと適切な環境下で起こる不眠
  • 夜間の睡眠困難により、疲労、不調感、注意・集中力低下、気分変調などの日中のQOLの問題が起きている場合
  •  つまり、適切な時間帯に寝床で過ごす時間を確保しているのに夜間の睡眠の質が低下し、日中に生活の質の低下がみられる状態です。

    Q 不眠症はどのくらいの人が罹っているのですか?
     世界各国の調査をまとめると、夜間睡眠困難の症状は成人の10〜48%、睡眠困難の症状と日中のQOLの低下を伴う臨床的な不眠症の有病率は9〜15%と考えられます。日本では、夜間睡眠困難が20%前後、睡眠困難の症状と日中の QOLの低下を伴う臨床的な不眠症が13%と推定されています。

    Q 最近は「断眠」という言葉もありますね。
     不眠の治療では、眠れないことそのものではなく、眠れないために起こった生活の質の低下に着目し、日中の生活の質を改善することが治療のゴールとなります。一方で、仕事などで適切な時間帯に床で過ごす時間が確保できないといったことでも睡眠は量的に不足します。その状態を不眠症と区別し、最近は断眠と呼ぶようになっています。

    Q 不眠症は、どんな症状が現れますか?
     なかなか寝つけない「入眠困難」、あるいは夜中に何度も目覚めてしまう「中途覚醒」、眠りが浅くて熟睡できない「熟睡障害」、朝早く目が覚めて睡眠が足りないのに眠れない「早朝覚醒」などがあります。

    Q 眠れないと、夜に不安になってよけいに眠れなくなるのですが、それも不眠症ですか?
     精神生理性不眠、原発性不眠症と呼ばれる症状で、不眠を示す睡眠障害のなかで最も頻度の高い不眠症です。この不眠症は「慢性の精神的緊張・不安」と「条件づけ」という二つの要因によって起こると考えられています。毎晩、「眠れるか」と心配し、その強い不安や緊張が不眠の要因になり、さらに眠ろうと努力することで不安や緊張が増し、よけいに眠れなくなるのです。寝室でも、「今夜も眠れないのではないか」と不安や緊張がさらに高まり、眠れない状態がひどくなります。
     このような人は、実際以上に不眠に対してこだわりがあり、不眠を強く意識して悩みを訴えるケースが多いもの。治療には、生活指導や睡眠薬が使われています。



    Q 薬を飲んで眠れなくなる状態もあると聞きました。
     薬原性不眠と呼ばれる症状です。体の疾患の治療薬には副作用として不眠をもたらすものがあり、そうした薬の服用によって起こる不眠です。薬としては、抗パーキンソン病薬のレボドパ、アマンタジン、降圧薬のプロプラノノールなどのベータ遮断薬、副腎皮質ステロイド、インターフェロンなどがあります。

    Q 体の疾患そのものでも不眠になりがちですね。
     体の疾患でかゆみや痛みなど不快感があると睡眠が妨げられ、不眠をもたらすことがあります。体の疾患としては、慢性の痛みでは頚椎症や腰痛が最も多いようです。かゆみは、寝入るときに末梢血管が拡張する際にかゆみが増すため、入眠がむずかしくなるとされています。
     慢性閉塞性肺疾患や気管支喘息でも、呼吸困難に伴い不眠が生じることがあります。前立腺肥大や膀胱炎では尿路系が刺激され不眠になり、特に中途覚醒が現れることがあります。

    Q 精神疾患における不眠とは、どんな症状ですか?
     特にうつ病は要注意です。初期には不眠だけを訴えることがあり、やがて入眠困難、中途覚醒、早朝覚醒、熟睡感欠如、休息感欠如、朝の離床困難が合わせて起こります。睡眠薬だけでは改善しない可能性があるので、速やかに専門医による診断・治療を受けましょう。

    Q 認知症など脳の疾患でも不眠になると聞きました。
     アルツハイマー病、パーキンソン病などの神経変性疾患、脳血管障害、脳腫瘍や頭部外傷では、急性にあるいは慢性に不眠が起こることがあります。脳障害が直接、睡眠機構に悪影響を及ぼし不眠が起こる場合と、神経疾患による身体症状の悪化によって不眠になる場合があります。認知症を伴う不眠では、夜間に問題行動を示すこともあります。

    Q 過眠症って、どんな症状のことですか?
     夜間に十分に眠っているのに、昼間の眠気が強く、仕事や学習などの日常生活に支障 をきたす症状です。ナルコレプシー、特発性過眠症などのように覚醒機構の機能低下によって日中に眠気が現れる一次性の過眠症と、薬剤の副作用、睡眠時無呼吸症候群や周期性四肢運動障害のように夜に寝られず十分な休息がとれない結果、日中の眠気が強く現れるケースがあります。

    Q 薬による過眠とは、どのようなことでしょうか?
     抗ヒスタミン作用のある風邪薬や抗アレルギー薬、抗不安薬、抗うつ薬や抗精神病薬などには、副作用として日中の眠気や過眠をきたすものがあります。特に、高齢者では代謝が遅くなりがちで、睡眠薬の効果が日中まで続き、日中の強い眠気が現れることがあります。

    Q ナルコレプシーはどんな症状ですか?
     10歳代に発症する過眠症の典型で、下記の情動脱力発作を伴うナルコレプシーは米国や西欧諸国の人口の 0.02〜0.18%で認められ、日本ではその率がやや高く0.16〜0.18%が報告されています。
     ナルコレプシーでは、急に睡魔におそわれて眠ってしまう睡眠発作と呼ばれる症状に加え、笑ったり驚いたりすると突然に身体の力が抜ける情動脱力発作、眠りぎわの睡眠麻痺や入眠時幻覚などが一緒に起こる特徴があります。

    Q その他の過眠症について教えてください。
     夜間に十分寝ても一日中眠気が続く過眠症としては、特発性過眠症があります。髄膜炎や頭部外傷が契機となって発症することがあります。







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