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(1)改正指針の特徴と背景


 2014年3月末、国(厚生労働省健康局)は「健康づくりのための睡眠指針2014」を発表した。2003年に「健康づくりの睡眠指針」が策定されて以降、11年ぶりの改訂である。
 何が、どう変わったのか、また、なぜ変わったのか、私たちは生活のなかで睡眠をどう捉えていくべきかなどを、新しい睡眠指針を踏まえつつ考えてみたい。
 11年ぶりの改訂で大きく変わったのは、次の3点だ。

・従来7項目だった指針が5項目増えて12項目となった
・若年世代、勤労世代、熟年世代とライフステージ別に内容を記述した部分がある
・高血圧をはじめとした生活習慣病、うつ病など心の健康などの観点から捉えた記述が増えた

 この3点を見ると、前回の指針策定から10年あまりで、睡眠に関する医学的な研究が進み科学的根拠をもとにした記述ができるようになったこと、また、国民の睡眠に対する関心も高まってきたことがうかがえる。
 まず睡眠指針では、「睡眠指針2014」全体のなかで特に重要と思われるポイント12項目(睡眠12箇条)を挙げ、次のようにわかりやすい言葉で示している。1条で総論、2条〜5条は基本的な科学的知見、6条〜10条では予防や保健指導の方法、11条〜12条では睡眠に関わる病気の早期発見の要点を示した格好だ。その概略とともに見ていこう。




1 良い睡眠で、からだもこころも健康に。
睡眠は心身の疲労回復のために重要であり、生活習慣病、心の病い、睡眠障害などのリスクの予防にもつながる。定期的に睡眠を見直すことが、事故防止、体と心の健康づくりには欠かせない。

2 適度な運動、しっかり朝食、ねむりとめざめのメリハリを。
 適度な運動を習慣づけると、入眠を促し、中途覚醒を減らす。しっかりと朝食を摂るなど正しい生活習慣を持つと、睡眠と覚醒のリズムにメリハリがつく。一方で、就寝前の飲酒や喫煙、カフェインの摂取などは、睡眠の質を悪化させるので避けたい。

3 良い睡眠は、生活習慣病予防につながります。
 睡眠不足や不眠の解決が、生活習慣病の予防につながることがわかってきた。また、睡眠時無呼吸症候群を放っておくと、高血圧、糖尿病、不整脈、脳卒中などの危険性が高まるとされる。そうした生活習慣病の予防のためにも、「良い睡眠」が欠かせない。

4 睡眠による休養感は、こころの健康に重要です。
 うつ病になると、9割近くの人が何らかの不眠症状をともない、休養感が得られなくなる。集中力の低下や頭痛、消化器系の不調にもつながるので注意したい。

5 年齢や季節に応じて、ひるまの眠気で困らない程度の睡眠を。
 日本の成人の標準的な睡眠時間は6時間以上8時間未満だが、加齢にともなって減少していく傾向があり、また、日の短い季節では長くなる傾向もある。個人差はあるものの、どんな人も日中の眠気で困らない程度の睡眠が重要である。
 
 
6 良い睡眠のためには、環境づくりも重要です。
 寝室や寝床の温度や湿度は、寝つきや睡眠の深さに影響する。入浴や就寝前の照明の明るさの調節をはじめ、自分に合ったリラックスできる方法を工夫することが大切だ。

7 若年世代は夜更かし避けて、体内時計のリズムを保つ。
 若年世代の休日の起床時刻が平日と比べて2〜3時間程度遅くなるのは世界的に共通する傾向だが、そのようなことが続くと体内時計のリズムを崩すことにつながる。思春期になると夜更かしをする傾向もあり、不調にもつながりやすいので、注意したい。

8 勤労世代の疲労回復・能率アップに、毎日十分な睡眠を。
 勤労世代では、十分な睡眠を確保しにくい事情もあるが、睡眠不足は注意力や作業能率、生産性の低下にもつながるので要注意。睡眠は「ためる」ことはできず、一方で疲労は蓄積する。夜間に十分な睡眠がとれなかった場合は、午後30分以内の短い昼寝が効果的。

9 熟年世代は朝晩メリハリ、ひるまに適度な運動で良い睡眠。
 高齢になると必要な睡眠時間は短くなるが、寝床で過ごす時間を適正に保つことは重要だ。夜間に熟眠感を得られる睡眠をとるには、無理をしない程度の軽い運動をすること。それが生活習慣病の予防にも役立つ。

10 眠くなってから寝床に入り、起きる時刻は遅らせない。
 眠たくないのに無理に眠ろうとすると、かえって緊張を高め、眠りへの移行を妨げる。必要以上に寝床で長く過ごすようなことはせず、自分自身でリラックスして入眠できる方法を工夫し、むしろ起床時刻を一定に保つようにしたい。

11 いつもと違う睡眠には、要注意。
 睡眠中の激しいいびき・呼吸停止、手足のびくつき・むずむず感や歯ぎしりは睡眠時無呼吸症候群、周期性四肢運動障害の可能性もある。十分な睡眠時間を確保していても日中の居眠りや眠気で困る場合はナルコレプシーなど過眠症の可能性もあるので、医師など専門家に相談すべきだ。

12 眠れない、その苦しみをかかえずに、専門家に相談を。
 睡眠に問題が生じて自分自身の工夫だけでは改善しないと感じたときは、医師、保険師、看護師、薬剤師など身近な専門家に相談することが大切。特に薬剤を用いて治療を受ける場合は、医師・薬剤師の服薬指導を受けることが重要になる。

 この睡眠指針が改訂された直截的な背景には、平成25年から国が「健康日本21」(第2次)をスタートさせたことがある。健康増進において、睡眠の重要性についてより普及啓発を行っていく必要性があると考えたわけだ。
では、12箇条にはそれぞれどのような科学的根拠があるのか。次にその内容をかいつまんで紹介していこう。







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