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●成長ホルモンと睡眠●

成長ホルモンとはどのようなものか。これはアミノ酸によって構成される物質で、細胞や組織の成長を促す働きのほか、新陳代謝をコントロールする働きをもっている。平たくいうと、骨を伸ばしたり筋肉を増やしたりして、成長を促すホルモンのことだ。また、代謝のコントロールという意味からも疲労回復に役立ったり病気への抵抗力を高めたりする。特に若年層には欠かせない物質の一つである。




成長ホルモンのほかにも、睡眠に関係があるホルモンがある。その一つがメラトニンだ。アミノ酸は主にタンパク質が分解されてでき上がるが、そのタンパク質は睡眠と覚醒、言い換えると昼と夜のサイクルをコントロールするメラトニンの分泌にも欠かせないものである。
また、セロトニンというホルモンも睡眠に関係がある。セロトニンは脳にある神経伝達物質で、心の安定を図る効果があるとされている。睡眠中はほとんど分泌しないが、朝、光の刺激を浴びると分泌を始める。「朝、目覚めたら陽の光を身体いっぱいに浴びるとよい」と言われるのは、セロトニンの分泌が有効だからだ。



なぜ、成長ホルモンの分泌には睡眠が大事なのだろうか。人間の身体は交感神経と副交感神経によって支えられ、日中は交感神経が優位になり、夜間や就寝中は副交感神経が優位になることはよく知られている。そして、成長ホルモンは、副交感神経の優位な夜間や就寝中に多く分泌されるからだ。
この成長ホルモンの分泌量は、一生のうちで、生まれてから幼児期になるにつれ徐々に増え、思春期で最大になり、20歳前後から減少に転じていく。ただし、減少するといっても、成人になればやがてなくなるというわけではない。大人になっても一定量は分泌される。
この成長ホルモンの1日単位の分泌量の変化を見ると、眠っている間、均質に分泌し続けるわけではない。一般に睡眠状態で2時間くらいするとノンレム睡眠に入っていくといわれるが、その時間帯に多く分泌するようになる。だから、生活が乱れて眠りが浅くなったり睡眠不足になったりすると、十分には分泌されないことになる。



では、思春期において十分な睡眠とはどのくらいの時間のことを言うのだろうか。5年ごとにNHK放送文化研究所が行う国民生活時間調査では、2010年で、10代男性が7時間36分、同女性が7時間48分。いずれも2005年調査よりも減少し、また、趨勢としても睡眠時間は減少する傾向にある。
よく言われる「1日8時間睡眠」がすべての人にベストとは限らないが、睡眠時間が減少することは十分な睡眠がとれていないことにつながり、つまり成長ホルモンの分泌がわずかながらでも阻害されているのではないか、ということが考えられる。
一方で、どんなに睡眠時間を長くとっても、それ自体が成長ホルモンを多く分泌することには直結しないという意見もある。成長ホルモンの分泌にとって十分な睡眠時間が必要であるとは一概に言えないという意見だ。
なぜなら、前述のように、成長ホルモンの分泌は寝入ってから2時間〜3時間(1サイクル目のノンレム睡眠期)に多いとされるからだ。つまり、7時間寝ようが9時間寝ようが、成長ホルモンの分泌には直接的な関係がなく、むしろ、寝つきをよくして最初のノンレム睡眠をしっかり確保することが大切ということになる。
十分な成長ホルモンの分泌には、最初の3時間くらいがぐっすり眠れることが大切である。そのためには、若い頃から生活リズムを一定に保ったり、寝る2時間くらい前に有酸素運動を行ったり、寝る直前に夜食など食べないようにしたい。



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