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●安心して眠るための「眠り小物」の善し悪し●

睡眠時間を年代別で見ると、10代は徐々に睡眠時間が減っていく時期だ。もちろん個人差はあるが、男性では10代から減少し始め30代に最も睡眠時間が短くなり、女性は40代が最も短くなる傾向がある。
徐々に減少していく睡眠時間、できるだけ安心して寝られるようにするため、ぬいぐるみや抱き枕などさまざまな小物を寝室・寝床まわりに置くことがある。それら小物を総称して、「眠り小物」と呼ぶ。




少し古いデータになるが、1999年に睡眠文化研究所が行った調査によると、よく利用される眠り小物のトップは「本・雑誌」だとのこと。以下、2位が「音響機器」、3位が「枕・クッション」と続く。そのほか調査では、耳栓、軍手、また、カメラなどの愛用品といった小物も挙がったそうだ。
もし、いま同様の調査をしたら、確実に「携帯電話・スマートフォン」が挙がってくるだろう。そのバックライトに使われるブルーライトの睡眠に与える影響については大きな問題があり、特に目の影響を受けやすい若年層に対する問題も指摘されているが、一方では「目覚ましとして使っている」などの利便性もあり、「他者とのつながりを感じる、就眠前のひとときの安らぎの効果」もあるだろう。これらの理由をきっかけとして、就眠前の携帯電話・スマートフォンの利用がすっかり習慣づいてしまっている若い人たちもいることだろう。
ところで眠り小物に関する最近の調査では、2013年1月に発表された、生活トレンド研究所の「『睡眠』に関する調査」がある。このなかで「使ったことのある/使ってみたい快眠グッズ」を20代〜40代の男女に聞いたところ、使用経験のあるグッズは「低反発枕」「湯たんぽ」などがあり、使用の意向が強いグッズとしては「低反発マットレス」「睡眠計」が挙がっている。



睡眠計に類する計測器具は、iPhoneやandroid端末のアプリとしても販売されているので、一般に思われている以上に日常化したグッズとなっているのかもしれない。
また、最近では就眠において心身をリラックスした状態に導く睡眠障害サポート器具も開発されている。たとえば、天井に優しい光の円を映し、それをゆっくりと目で追う光源などがある。「快眠グッズ」も時代とともにハイテク化しているということだろうか。
ここに挙げたような「快眠グッズ」と冒頭に述べた「眠り小物」では、その概念に多少異なる面も見られる。しかし、安心して眠るには、たんに寝室を暗くしてベッドに横になるだけでなく、何らかの小物をきっかけとして気持ちを切り換えることが重要な要素の一つとなっていることがわかる。眠り小物の効用は、「眠気を誘う」ことだけではなく、「これから寝る」という、いわゆる儀礼・儀式的な側面をもっている。



ここで、眠り小物の「定義」を見ておこう。『睡眠文化を学ぶ人のために』(高田公理/堀忠雄/重田眞義編)では、「ベッド上やベッド脇、寝室内にあって、寝る前の就眠儀礼に必要不可欠で、場所を問わず携帯可能な、お気に入り品の総称」であり、「いかに巨大でもテディベアのぬいぐるみは『眠り小物』に含まれるが、いくら薄く軽くてもカーテンは含まれない」としている(抜粋)。いわば就眠儀礼に必要な存在として、あえて就眠を阻害するような小物も、眠るためのスイッチの切り替え役として必要な面があるということだ。そうした面がひと昔前は本や雑誌、音響機器にはあり、いまはスマートフォンにあるということだろう。
このような眠り小物のうち、古くもいまも重要とされる「枕」、特にここ数年関心の高まる「抱き枕」の効用を考えてみよう。
抱き枕には、まず、胎児の頃の姿勢(胎児姿勢)を自然に保つような効果がある。また、寝ている間の姿勢(寝姿勢)を良好に保つ。睡眠中に自分の姿勢がどのようになっているかはわからないものだが、これらの効果があれば、たしかに睡眠中の身体への負担を和らげ、安心して眠れる状態に導いてくれる。睡眠時間が短くなり始める10代の人にとって、想像以上に効果がある眠り小物かもしれない。



さまざまな眠り小物があるが、一人ひとりにとって何がふさわしいかは、まさに人それぞれである。たとえば「時計」を例に挙げると、最近では数がめっきり減ったが、アナログ時計の「カチ、カチ」と時を刻む音は、心地よいと感じる人にとっては羊を数えるよりおだやかに眠りを誘うのに対して、情緒が不安定な状態にある人にとってはよけいに神経が高ぶり、眠れなくなってしまう音だろう。そのため、特に不眠症の疑いのある人は、「時計を気にしないほうが安眠によい」という意見もある。



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