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ヨーロッパに「王様は仰向けに眠り、賢者は横向きに眠り、金持ちはうつぶせに寝る」という古い諺があるという。寝るときの姿勢が、その人の性格・志向性を端的に示しているとされることからきているのだろう。

たしかに、人間は起きているときより寝ているときのほうが、“素の自分”が出ているのかもしれない。たた、寝ている姿=寝相と考えると、寝ている間に寝返りを打つ人も多く、どの姿勢が睡眠時の姿勢かは判断しにくい。そこで、就寝時の姿勢=寝姿と考え、その寝姿と人間の性格・志向性などを研究した例を2つ紹介しよう。




一つは英国サリー大学のクリス・イドジコウスキー教授の研究だ。彼は2003年、あるホテルの宿泊客1000人を対象に、就寝時の姿勢とその人の性格の傾向を調査分類した。その結果は、寝姿をいくつかの累計に分け、その心理状態を示している。
  1. 胎児型―背中を丸めて眠るタイプ
    調査対象の41%がこのタイプであり、女性は男性の2倍の人数だったという。このタイプは周囲の人からはタフに見えるが、実は繊細。初対面では緊張するものの、すぐにリラックする。
  2. 丸太型―横向きで腕を下に下げて眠るタイプ
    調査対象の15%がこのタイプだったという。外交的で大勢に囲まれていることを好む社交家・楽天家。人を信頼するので、逆に騙される傾向もある。
  3. おねだり型―横向きで腕を前に出して眠るタイプ
    調査対象の13%がこのタイプだったという。開放的だが、疑い深い皮肉屋の傾向も強い。意思決定は慎重だが、いったん決定すると変えることはない傾向がある。
以上が調査対象の10%以上が示した寝姿であり、以下、「兵士型―仰向けで腕を脇につけて眠るタイプ」「うつぶせ寝型―うつぶせで枕を抱えるように眠るタイプ」「ひとで型―仰向けで手を上げて寝るタイプ」と続く。



この寝姿と性格の分類では、さらに古い研究もある。精神科医サミュエル・ダンケル氏の分類だ(『スリープ・ポジション』1978.8、集英社)。ダンケル氏は、多くの患者を分析した結果を次の6つの類型に分けて、その性格や心理状態を解説している。
  1. 完全なる胎児
    顔や腹を隠すように、横になって丸まって寝る姿だ。
    いつも、誰かに守ってもらいたい願望があり、自分の殻に閉じこもる傾向がある。幼い頃、自分を守ってくれた両親や信頼できる人に依存し続けたいという心理状態がある。
  2. 半胎児
    横向きに、膝を少し曲げて寝る。右利きの人は右を下に、左利きの人は左を下にして寝ることが多い。
    日常でも過大なストレスを感じることなく、問題をうまく処理できる人に多い寝姿だ。安定した人柄で付き合いもよく、人に安心感を与える。
  3. うつぶせ
    うつぶせで足をちょっと開いたり、肘を両側に出したりなど、広めの空間をとった寝姿だ。
    几帳面で常に周囲に細心の注意を払っている。その一方で、自分中心でものごとを処理しないと気がすまないタイプでもある。
  4. 王様
    仰向けになって寝る姿である。
    自分に自信があり、性格は安定していて人付き合いもよい。柔軟で、人と衝突することも少なく、幼い頃、親の期待を一身に集めて育った人に多い。
  5. 鎖につながれた囚人
    片方の足を曲げ、足首を重ねて横になって寝る姿である。
    足首を重ねるのは、何か不安なことがあったり人間関係がうまくいっていなかったりなどの悩みがあることを示している。
  6. スフィンクス
    背中を丸めてひざまずいて寝る姿。大人にはまず見られないが、子どもではよく見かける。
    眠りが浅い人、よく眠れない人に多く、睡眠を拒否しているようでもある。早く目覚めて昼間の活動をしたいという意識の現れでもある。



もちろん、人の性格はまさに様々で、一概に類型化できないものともいえる。ただし、これらは多くの人の面接・観察・調査を踏まえた結果であり、一定の傾向が読み取れるのではないだろうか。

じつは、この寝姿は、健康・病気、また美容などとも関連があるという。たとえば、仰向け寝では、顔や骨盤のゆがみを防止し、顔と体のバランスによい寝姿であるのに対し、いびきの原因や睡眠の質の低下などもあり、とくに呼吸器疾患のある人には不向きだという意見もある。

一方、うつぶせ寝は、いびきの軽減や睡眠時無呼吸症候群の防止とともに、睡眠の質が上がるなどのメリットがあるが、顔に跡が残りやすいといったデメリットもある。

では、医学的にはどのような寝姿が理想なのだろうか。中医学(中国の医学)の観点からは、「右側を下にして、足を軽く曲げ、体がS字になる横向き寝」がよいとされている。心臓が圧迫されず、呼吸が整い、消化吸収にもよいからだという。そのほか、血行をよくし、脳梗塞を予防する観点から、うつぶせ寝を推奨している医師もいる。「腹臥位療法」と呼ばれるものだ。

なお、うつぶせ寝では腰痛を悪化させると注意を喚起する医師もいる。だから、「この寝姿が一番正しい」と一概に断定することはできない。



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