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動物の三大本能として食欲、性欲、睡眠をあげることができます。食欲の重要性は言うまでもありませんね。食事を摂らなければ生きていくことができませんから。性欲は種の保存のためには絶対に必要ですが、我慢しても死ぬことは通常ありません。睡眠はどうでしょうか?あまりにも日常の生活に溶け込んでいて、欲と感じないかもしれません。でも、食欲と同様に、睡眠を我慢すると動物は死んでしまいます。人において、200時間以上断眠を続けた記録がありますが、長時間の断眠により様々な精神異常(幻覚、情緒不安定など)が出現したことが記録されています。




なぜ眠るのだろう?睡眠とは何か?などの質問に対して明確に答えることはできません。地球上に生命が誕生してからの進化の過程において睡眠という機能が必要不可欠なものとして生まれたのです。動物種による睡眠の違いを見ても、鳥類や哺乳類というより高等な生物においてレム睡眠、ノンレム睡眠という高度な睡眠機能の使い分けをみることができるのです。


人間の平均睡眠時間がおよそ7-8時間ですが、他の動物ではどうなのでしょうか?気になってちょっと調べてみました。すると睡眠時間が長い動物としてオオナマケモノの20時間、短い動物としてキリンの20分という報告がありました。

キリンの20分というのには驚きで、もっと調べてみると面白いことが解りました。1956年にキリンの睡眠時間に関する始めての報告があり、それによるとキリンの睡眠時間は21分と記されています。ただ、この論文は大事な点を見逃していたようです。そうそう、キリンの寝姿を想像できますか?キリンは座って首を後方に曲げてお尻に乗せて眠る(まるで白鳥の寝姿)と言われています。この論文では、そのような姿勢をとった時間を測定していたのです。しかしながら、スイスのチューリッヒ大学から1996年にキリンの睡眠に関する研究報告がありました。それによると、キリンは立った状態でも、座って首を持ち上げている状態でも眠ることができ、1日の平均睡眠時間は4.6時間と算出されたのです。ただし、キリンの睡眠は断続的で1回の睡眠が10分以上持続することは少ないそうです。




様々な動物の睡眠の特徴から、睡眠の本質を読み取ることができます。キリンのような草食性動物では、外敵から身を守るために睡眠時間は短い傾向があり、1回の睡眠も長く持続しません。足が長く大型のキリンは座った状態から立ち上がるまでに時間がかかります。立ったままで寝ることも外敵から身を守り、種の保存には必要だったのでしょう。さらには、長い首の先の頭部に血液を供給するために、心臓から勢いよく血液を送り出す必要があります。キリンの血圧は250 mmHg以上と、人間から見ればかなりの高血圧です。脳に入る前に血圧が下がるような特殊な血管網が発達していますが、首を心臓と同じ位置まで折りたたんで白鳥のように寝る姿勢を長時間とるのは危険なことなのかもしれません。渡り鳥あるいはイルカやクジラは、大脳半球を交互に寝かすことによって、長時間空を飛び続けたり、海を泳ぎ続けたりできるそうです。そこまでしても睡眠をとる必要があるのです。睡眠は生きていくために必要不可欠な存在であることが納得できると思います。

では、私たち人間はどうでしょうか?文明が発達する前は、日が沈み暗くなれば眠り、日の出とともに目覚めていました。ところが、エジソンが電球を発明してから人間の生活様式は様変わりしました。夜も活動できるようになったのです。エジソンの電球の発明からわずか1世紀ちょっとで、人間の平均睡眠時間は明らかに短くなっています。さらには、24時間眠らない社会となり、交代勤務や昼夜逆転した生活を余儀なくする人が増えています。それと同時に、睡眠障害を有する人が確実に増加しています。1世紀ちょっとでは、生活に適応できるように睡眠が進化してはくれないのです。




さらには、現代社会では様々なストレスあるいは生活習慣病などにより、健康的な睡眠を確保できない人が急増しています。食物連鎖の頂点に立つ人間は外敵から襲われる危険性があまりありませんから、草食動物のように断続的に短い睡眠を繰り返す必要性がありません。また、夜間にへたに動くとかえって危険が増えます。ですから、人間の睡眠は就寝したら途中で覚醒することなく朝まで持続するように進化したのです。ところが、ストレスや生活習慣病と関連するいびきなどは、睡眠を妨害し質の悪い睡眠へと変化させます。ですから、睡眠のために十分な時間を割いても、疲れや眠気がとれないのです。睡眠は動物が生き延びるために進化した重要な生理現象であることを忘れてはいけないのです。持続的な睡眠障害は、私たちが生きていく上で様々な害をもたらすのです。


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