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●過眠症の鑑別●


日中の過度の眠気、疲労感、集中力の低下などは、肉体や精神を過度に酷使した場合などの日常生活の中でも経験することがあります。日中の過度の眠気が持続し、学業や仕事に支障をきたすようになると病的な原因を考える必要がでてきます。 その場合、日中の過度の眠気の原因となる因子や過眠の症状などを順次照らし合わせていくことにより、ある程度の鑑別が可能となります。



●1 薬物使用の有無●

日中に過度の眠気がある場合、睡眠薬、抗うつ薬、抗ヒスタミン薬などの眠気を催す作用がある薬を服用していないか、最初に確認します。


●2 精神疾患の有無●

例えば、季節性うつ病では、秋から冬にかけて抑うつ状態を呈しますが、過眠の症状が高頻度で出現します。


●3 日常生活での夜間睡眠の状態を確認●

夜間睡眠を十分確保していない場合は、慢性的な睡眠不足に陥り、日中に過度の眠気が出現しやすくなります。仕事環境などにより、十分な睡眠を確保できない状態が持続する場合は、睡眠不足症候群が疑われます。また、1日に必要な睡眠時間には個体差があり、成人で9時間以上の睡眠が必要な人(ロングスリーパー)も存在します。ロングスリーパーの場合は、7時間から8時間の睡眠時間を確保していてもそれでは不十分なので、日中の過度の眠気が出現しやすくなります。


●4 いびきや睡眠中の不規則な呼吸の有無●

肥満あるいは肥満でなくても骨格的にあごが小さい場合には、睡眠時に気道を十分に確保できないので、大きないびきをかいたり、一時的な無呼吸状態が出現しやすくなったりします。いわゆる、睡眠時呼吸障害があると、日中に過度の眠気が出現します。さらには、朝目覚めたときに、口の渇きや頭痛を伴うこともあります。いびき、肥満、小さなあごの他に、糖尿病、高血圧、飲酒、喫煙などが睡眠時無呼吸のリスクファクターとされています。


●5 日中の発作的な居眠り、情動脱力発作●

日中に突然、耐えがたい眠気に襲われて、ありえない状況下(例えば、食事中、面談中など)でも居眠りしてしまう場合、ナルコレプシーなどの過眠症が疑われます。ナルコレプシーの場合は、思春期頃から10代後半に発症のピークがあります。ナルコレプシーの場合は、睡眠発作が起こっても、20分程度の短時間の睡眠をとるだけで、爽快に目覚めることができます。また、大喜びした時などに突然体の筋肉から力が抜ける情動脱力発作を起こすことがあります。まぶたが落ちる、声が出ない、膝ががくんとする、座り込んでしまうなど症状は様々ですが、一時的なもので意識もしっかりしています。さらには、寝入りばなに、生々しい、かつ恐ろしい幻覚や金縛りを体験することもあります。


●6 寝入りばなに足がむずむずする、あるいは睡眠中に足が周期的にピクンと動く●

入眠時に足がむずむずするような異常感覚に襲われる場合、むずむず脚症候群が疑われます。睡眠中に足が周期的にピクンと動く場合、周期性四肢運動障害の可能性があります。むずむず脚症候群とは異なり、本人が自覚していないことが多いです。むずむず脚症候群や周期性四肢運動障害では、睡眠障害が起こりやすいので、日中に過度の眠気が出現しやすくなります。



過眠状態が昼夜を問わず数日間から数週間続く状態を不定期に繰り返すと、反復性過眠症が疑われます。通常の眠気とは異質であり、周囲に対する反応が鈍く、集中力を持続できず放置するとすぐに眠り込んでしまいます。軽度の意識障害が出現しますが、食事や排便を行うことはできます。また、女性の性周期に一致して強い眠気が出現する場合は、反復性過眠症の亜型である月経関連過眠症の可能性があります。


●8 睡眠と覚醒のサイクルがずれる●

慨日リズムの狂いにより睡眠時間帯がずれることで、日中に過度の眠気が出現する場合があります。海外旅行の際の時差ぼけや交代性勤務による日中の眠気の出現は、概日リズムのずれによって生じることが知られています。また、何らかの原因で概日リズムに狂いが生じる疾患、すなわち、睡眠相が後退する睡眠相後退症候群、睡眠相が前進する睡眠相前進症候群、概日リズムが4時間以上になる非24時間睡眠覚醒症候群などが知られています。


●9 特発性過眠症●

上記のいずれにも該当しない日中の眠気が認められるとき、特発性過眠症の可能性を疑います。日中の眠気の強さは、ナルコレプシーよりも弱く発作的な睡眠はありません。しかしながら、短時間の居眠りをしても爽快に目覚めることはできません。また、ナルコレプシーで見られる情動脱力発作、入眠時幻覚などは認められません。


参考文献 睡眠障害の対応と治療ガイドライン (じほう社)



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